老化機構研究チーム プロテオーム 研究員の川上恭司郎が第41回甲状腺病態生理研究会において研究奨励賞を受賞しました。
甲状腺濾胞癌の術前診断を目指した血中細胞外小胞のプロテオミクス解析
老化機構研究チーム プロテオーム 研究員 川上恭司郎
細胞外小胞は細胞から放出される膜小胞で、由来細胞のタンパク質などの情報を含むため、血液中の細胞外小胞は疾患の診断マーカーとして注目されています。甲状腺濾胞癌は、術前の細胞診では良性の濾胞腺腫との鑑別が難しく、確定診断に外科的切除が必要という課題があります。本研究では、血清中の細胞外小胞に含まれるタンパク質を網羅的に解析し、術前鑑別に役立つバイオマーカー候補の探索を行いました。
濾胞癌および濾胞腺腫患者の血清から細胞外小胞を精製し、質量分析法によるプロテオーム解析を実施した結果、約640種類のタンパク質を同定しました。そのうち両群間で発現量が2倍以上異なる18種類を抽出し、癌の浸潤・転移への関与が知られるRAB21に着目しました。濾胞癌患者の血清由来細胞外小胞でRAB21タンパク質の増加を確認し、公開データベースでも濾胞癌組織でのRAB21遺伝子発現上昇が認められました。さらに、甲状腺濾胞癌細胞株でRAB21の発現を抑制すると、細胞移動能が有意に低下しました。
以上の結果から、血清中細胞外小胞のRAB21が濾胞癌と濾胞腺腫を術前に鑑別するバイオマーカーとなりうる可能性が示されました。またRAB21は移動能という癌細胞の特性にも関与することから、診断マーカーにとどまらず治療標的としての応用も期待されます。
賞状
<プレスリリース>血液検査で甲状腺濾胞がんを見分ける新技術の開発~手術前診断の精度向上で患者負担を軽減~
https://www.tmghig.jp/research/release/2025/0806.html