<プレスリリース>歯科衛生士の配置や言語聴覚士等の配置の多さは 介護老人保健施設における入所直後の入院を抑制

発表内容の概要

東京都健康長寿医療センター研究所の福祉と生活ケア研究チーム(医療・介護システム研究)は、筑波大学の医療医学系ヘルスサービスリサーチ分野との共同研究で、歯科衛生士の配置がある介護老健保健施設(老健施設)や、入所定員に対し言語聴覚士、薬剤師、看護師、介護職員が多く配置されている老健施設の方が、そうでない老健施設に比べて、入所30日以内(入所直後)の入院発生を抑制している可能性を明らかにしました。研究成果は、国際学術誌「Geriatrics & Gerontology International」に掲載されています。

研究目的

要介護状態にある高齢者にとって、療養環境が変わる直後は、せん妄や転倒などが起こりやすい危険な時期といわれ、入院の発生リスクも高くなると考えられます。老健施設のような介護保険施設に入所した直後は入院の発生リスクも高いと考えられるため、老健施設に入所直後の入院を予防することは重要な課題です。本研究では、老健施設における入所直後の入院の予防策を検討するため、全国の介護保険給付費明細書(介護レセプト)と介護サービス施設・事業所調査の情報を連結したデータを用いて、老健施設における入所直後の入院の発生に関連する施設要因と個人要因を検討しました。

研究の成果の概要

分析対象とした282,991名のうち、入所直後に入院した人は12,814名(4.5%)でした。施設要因として、歯科衛生士の配置があることや、入所定員に対し言語聴覚士、薬剤師、看護師、介護職員が多く配置されていることが、入所直後の入院発生を抑制(または予防)する要因として把握されました。また、入所直後に入院しやすい入所者の個人要因として、男性、高齢、要介護度が高いこと、自宅からの入所と比べ医療機関からの入所が挙げられました。

研究の意義

歯科衛生士の配置や言語聴覚士等の配置が多いことが入所直後の入院を抑制していたという本研究結果は、老健施設における入所直後の入院予防策を検討するための科学的根拠となる点で意義があります。今後は、入所直後の入院予防策を具体的に検討できるように、『なぜ、歯科衛生士の配置や言語聴覚士等が多く配置されていると入所直後の入院を抑制するのか』という機序について明らかにしていきます。

論文情報

掲載論文 Geriatrics & Gerontology International(2021年9月21日掲載)

タイトル Characteristics associated with hospitalization within 30 days of geriatric intermediate care facility admission

邦訳:介護老人保健施設における入所直後の入院に関連する要因

URL:https://doi.org/10.1111/ggi.14278

著者 Seigo Mitsutake 1, Tatsuro Ishizaki 1, Shohei Yano 1, 2, Rumiko Tsuchiya-Ito 1, 3, Xueying Jin 4, Taeko Watanabe 4, Kazuaki Uda 1, 4, Ian Livingstone 5, Nanako Tamiya 4, 6

光武誠吾、石崎達郎、矢野翔平、土屋瑠見子、金雪瑩、渡邉多永子、宇田和晃、Ian Livingstone、田宮菜奈子

1:東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム、2:救世軍ブース記念病院、3:医療経済研究機構、4:筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター、5:Panalgo、6:筑波大学 医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野

※本研究は厚生労働科学研究費補助金長寿科学政策研究事業「介護保険事業(支援)計画に役立つ地域指標-全国介護レセプト等を用いて―」(研究代表者:田宮菜奈子)と日本学術振興会基盤研究(B)「研究課題:20H03924」(研究代表者:光武誠吾)の助成を受けて実施されました。

プレス資料

(問い合わせ先)

東京都健康長寿医療センター研究所

福祉と生活ケア研究チーム(医療・介護システム研究)

光武誠吾 電話:03-3964-3241(内線4229)