<プレスリリース>適切な筋分化に不可欠なビタミンC

2026.1.8 

発表内容の概要

 東京都健康長寿医療センターの石神昭人副所長、近藤嘉高研究副部長、刑部紀亜連携大学院生(研究当時)、箕輪樹連携大学院生(研究当時)、東洋大学の佐藤綾美准教授、順天堂大学の町田修一教授、洪永豊研究員らと共同で、ビタミンCは、DNA脱メチル化(エピジェネティクス制御のひとつ)を促進することにより、筋分化を制御することを明らかにしました。この研究成果は、筋肉におけるビタミンCの新たな役割解明に大きく貢献するものと期待されます。
 本研究は、「Archives of Biochemistry and Biophysics」(電子版)に2025年12月18日付けにてオンライン掲載されました。

ハイライト

ビタミンCは、筋肉に存在する。
適切な筋分化にビタミンCは必須である。
●DNA脱メチル化を介して、ビタミンCは筋分化を制御することを明らかにした。
●本研究は、加齢に伴う筋力低下やフレイル予防、さらには栄養と筋健康の関係を考える上で重要な手がかりとなる。

研究目的

 筋肉は、健康な生活や自立した日常を支える重要な組織です。ビタミンCは筋肉にも存在する栄養素ですが、筋肉が作られる過程でどのような役割を果たしているのかは、十分に分かっていませんでした。本研究の目的は、ビタミンCが筋芽細胞の増殖、分化、融合にどのように関わっているのかを明らかにし、筋肉の健康維持や加齢に伴う筋力低下の理解につなげることです。

研究成果の概要

 ビタミンCは、筋肉を含む私たちの体内に存在する重要な栄養素です。しかし、筋肉の形成を研究する際に用いられる筋芽細胞の細胞培養液にビタミンCが含まれていないことが一般的でした。本研究では、生体内により近い条件を再現するため、ビタミンCを含む培養液と含まない培養液を用いて、筋肉が作られる過程(増殖、分化、融合)におけるビタミンCの役割を詳しく調べました。その結果、ビタミンCが欠乏した培養液では、筋芽細胞は分化の初期段階では活発な変化を示すものの、最終的に形成される筋線維は十分に成熟せず、細く未発達な状態にとどまることが明らかになりました。一方、ビタミンCを含む培養液では、より太く成熟した筋線維が形成されました。さらに、ビタミンCの欠乏は、遺伝子の働きを調節するエピジェネティックな仕組みにも影響を与えることが分かりました。これにより、筋肉の適切な分化が妨げられる可能性が示唆されました。
 本研究は、ビタミンCが筋肉の健全な形成に不可欠であることを示す基礎的知見を提供するものであり、加齢に伴う筋力低下やフレイル予防、さらには栄養と筋健康の関係を考える上で重要な手がかりとなることが期待されます。

研究の意義

 本研究は、ビタミンCが適切な筋線維の形成に欠かせない役割を果たしていることを明らかにしました。筋肉は、歩く・立つといった日常動作を支える重要な組織であり、その健康は生活の質や自立した暮らしに直結します。本研究の成果は、加齢に伴う筋力低下やフレイルの理解を深める基礎的な手がかりとなります。また、筋肉の研究に用いられる培養実験の条件を見直す重要性も示しており、今後の筋肉研究の精度向上にも貢献します。将来的には、栄養と筋肉の健康の関係を考えるうえで、予防や健康維持につながる科学的基盤を提供することが期待されます。

掲載論文について

【掲載誌】
「Archives of Biochemistry and Biophysics」(電子版)(2025年12月18日)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003986125004187

【掲載論文の英文表題と著書およびその和訳】
Vitamin C is essential for proper myogenic differentiation
Yoshitaka Kondo, Ayami Sato *, Noritsugu Osakabe, Tatsuki Minowa, Yung-Li Hung, Shuichi Machida, Akihito Ishigami * (*corresponding author)
ビタミンCは適切な筋分化に必須である
近藤嘉高、佐藤綾美*、刑部紀亜、箕輪樹、洪永豊、町田修一、石神昭人* (*責任著者)


(図1)ビタミンCは、筋芽細胞に取り込まれ、DNA脱メチル化を促進し、適切な筋分化を誘導する。しかし、ビタミンCが無いと後期筋分化マーカーが早期から発現し、筋管の形成が損なわれる。

プレス概要

(問い合わせ先)
東京都健康長寿医療センター研究所
老化制御研究チーム 分子老化制御
研究副部長 近藤 嘉高
電話 03-3964-1141
Email: kondo@tmig.or.jp