<プレスリリース>独り好きの人は仲間はずれにどう反応するのか?―孤独を好む人は、社会的痛みの処理が異なることが明らかに―

2026.2.10 

発表のポイント

• 「独り好きの人」は、仲間はずれにされた際、感情を司る脳領域の活動が弱まり、身体感覚領域との連携が強まる独特の脳反応を示した。

• 社会的な痛み自体は保持しているが、脳がその感情の表出を抑えて処理している可能性が示唆される。

• 独り好きという特性が、社会的排除ストレスに対してどのような脳内メカニズムで対処しているのかを、科学的に明らかにした。

発表内容の概要

 東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太専門副部長と東京都立大学の渡邊塁客員准教授らの研究グループは、独り好き志向性の高い人では、社会的排除を経験した際に感情評価に関わる脳領域(前部島皮質)の活動が低下する一方、身体感覚を処理する領域との結びつきが強まることを明らかにしました。これは、社会的排除に伴う社会的な痛みを「感じていない」のではなく、感情として強く評価することを抑え、別の形で処理している可能性を示しています。この研究成果は、国際雑誌「Journal of Affective Disorders」(1月27日付)に掲載されました。

背景

 私たちは日常生活の中で、「仲間はずれ」や「無視される」といった社会的排除を経験すると、強いストレスや苦痛を感じます。こうした状況では、前部帯状皮質(ACC)や前部島皮質(aINS)といった脳領域が一貫して関与するため、これらは「社会的痛み」を処理する中枢と考えられてきました。しかし、「一人でいることを好む(独り好き)」人が社会的排除にどのように反応するのかは、これまで十分に明らかではありませんでした。独り好き指向性が高い人は対人関係の問題に適切に対処できるという報告もあり、社会的排除に対して何らかの耐性を示す可能性が考えられていましたが、脳がどのように反応しているのかについては、ほとんど検討されていませんでした。

研究方法と成果の概要

 そこで本研究では、健常成人40名を対象に、機能的MRI(fMRI)を用いた実験を実施しました。実験ではまず、抑うつ、孤独感、そして「独り好き志向性」の程度を、質問紙(Preference for Solitude Scaleという質問票)を用いて測定しました。その後、実験参加者はfMRI装置内で他者とボールを投げ合うゲーム課題(Cyberball課題:図左)に取り組み、途中で意図的に「仲間はずれ」にされる状況を経験しました。課題は12ブロックで構成され、各ブロック終了後にCyberball課題を行った際に感じた苦痛の程度(以後、主観的な苦痛)を評価しました。
 分析の結果、独り好き志向性が高い人ほど、抑うつ症状や孤独感が高いことが確認されました。脳活動では、仲間はずれにされた際、独り好き志向性が高い人で左前部島皮質の活動低下(脱活性化)が認められました。さらに、前部島皮質と身体感覚を処理する二次体性感覚野との機能的結合が強まっていました(図:右)。また、独り好き志向性が高い人では、前部帯状皮質の活動が主観的な苦痛の強さと関連を示しました。
 これらの結果は、独り好き志向性が高い人では内面的な社会的痛み自体は保持されているが、それに伴う感情の表出・処理は抑えられている可能性を示唆しています。

 

図. Cyberball課題(左)と前部島皮質と二次体性感覚野との機能的結合(右)

左:Cyberball課題では、参加者は常に画面中央に位置し、他の二人のプレイヤーとキャッチボールを行った。12ブロック中、最初の2ブロックは平等にボールがパスされるが、3ブロック以降は参加者に極端にボールがパスされない試行が含まれ、「仲間はずれ」が行われる。
右:独り好き志向が強い者では、前部島皮質と二次体性感覚野との機能的結合の強まりが確認されたが、独り好き志向が強くない者では、そのような傾向は確認されなかった。
※独り好き志向性は0点~12点で評価され、得点が高い者ほど独り好き志向性が高いとされる。
本研究では8点以上の者を「独り好き志向が高い者」と定義した。

研究成果の意義

 本研究は、「独り好きな人は社会的排除に強い」という単純な見方に疑問を投げかけます。独り好き志向性の高い人の脳は、社会的排除に対して感情的な評価を抑制しつつ、身体感覚的な処理へと重心を移すという特徴的な反応を示していました。これは、社会的痛みを軽減するための適応的な感情調整戦略である可能性がある一方、不安や抑うつの高さと関連する「代償」を伴う戦略である可能性もあります。つまり、独り好き指向性が高い人は、感情を鈍らせることで表面的には平静を保っているように見えるものの、その背景では社会的痛みを強く処理している可能性があります。
 本研究の結果は、「独り好きであっても、社会的孤立が健康に及ぼす悪影響が軽減されるわけではない」という、これまでの研究知見を脳反応の側面から支持するものです(関連記事参照)。独り好きであることは、必ずしも孤立への耐性を意味しない可能性が示されました。

掲載論文

国際科学雑誌Journal of Affective Disorders(現地時間1月27日)
Preference for solitude modulates anterior insula responses to social exclusion
(独り好きは社会的排除に対する前島皮質の反応を調節する)

【著者】
桜井 良太(東京都健康長寿医療センター研究所)
渡邊 塁(東京都立大学・トゥルク大学)
来間 弘展(東京都立大学)

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プレスリリース
「独り好き」志向性とこころの健康 ―「独りでいることを好む人」でも孤立の悪影響は緩和されない可能性が明らかに―
https://www.tmghig.jp/research/release/2024/0904.html

プレス概要

(問い合わせ先)

東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加とヘルシーエイジング研究チーム 桜井良太
電話 03-6905-6781 Email: sakurair@tmig.or.jp