脳出血は、脳内の血管が破れて出血を起こす病気で、脳卒中の中で脳梗塞の次に多いものになります。
日本における年間発症率は10万人あたり約50 - 60例とされています。高血圧が最も多い原因であり、高齢者に多く発症します。
脳出血は、突然発症し、迅速な治療が必要な緊急疾患です。
発症から早期に適切な治療が行われないと、重篤な後遺症や死に至ることもあります。
脳出血の主な原因は高血圧です。長期にわたる高血圧により、血管が脆くなり、破裂しやすくなります。
他の原因としては、高齢者に多いアミロイド血管症や脳動脈瘤、動静脈奇形などの血管の病気がみつかることもあります。近年内服されている方が多い、抗血栓療法(血をサラサラにする薬)の副作用なども挙げられます。
脳出血の症状は、脳出血ができた部位やその大きさによって異なりますが、突然の激しい頭痛、片側の手足の麻痺、言語障害、視覚障害、意識障害、さらにはけいれん発作などが典型的です。これらの症状は通常、数分から数時間以内に急速に進行するため、迅速な対応が求められます。
脳出血の診断には、画像検査が重要です。CT検査は最も一般的で、迅速かつ正確に出血の存在を確認できます。CTにより、出血の部位、大きさ、出血量、脳浮腫や脳ヘルニアの有無を評価できますが、血管の病気がないか確認するためにMRIも行います。血管造影検査(カテーテル検査)は、動脈瘤や動静脈奇形などの血管異常を確認するために行われることがあります。
これらの検査結果を基に、治療方針が決定されます。
脳出血の治療は、出血量や部位、患者の全身状態によって異なりますが、内科治療か外科治療を選択します。基本的には出血を制御し、頭の中の圧力(脳圧)を下げることが目的となります。まず、緊急の内科的治療として、血圧管理が行われます。高血圧が持続すると、出血が拡大し、脳圧が上昇するため、降圧薬を使用して血圧を迅速に低下させます。さらに、脳の腫れ(著しい場合は脳ヘルニアといいます)を予防・治療するために、脳圧を下げる薬剤が投与されます。脳出血が小さい場合には内科的治療のみとなりますが、出血が大きく命の危険がある場合や症状の進行が懸念される場合は外科的治療が選択されます(図)。
図
一般的な手術法には、頭蓋骨を大きく外して(開頭)手術をする開頭血腫除去術や小さい開頭で内視鏡を用いた血腫除去術があります。
また、血腫が脳の中の空間(脳室内)に及んでいる場合、頭にチューブを挿入し(脳室ドレナージ)、脳の圧力を管理する方法が必要になることがあります。
一般的に脳出血は後遺症を残しやすく予後不良とされます。そのため、リハビリテーションも脳出血治療の重要な一環です。発症後できるだけ早期にリハビリテーションを開始することで、脳の機能回復が期待されます。
さらに、再発予防として、血圧管理や生活習慣の改善が重要です。
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