認知症

代表的な症状

認知機能低下(記憶障害、見当識障害、判断力・理解力低下等、失語、注意障害等)、性格変化、意欲低下

疾患概要

認知症とは脳のはたらき(認知機能)が大人になってから低下し、日常生活に支障をきたす病気です。なお、認知機能低下があっても日常生活に影響のない状態は軽度認知障害(MCI)といいます。

認知症は加齢とともに多くなります。超高齢社会である日本においても認知症の患者数は増加しており、2025年には約700万人(65歳以上の20%)になると推計されています。一方で64歳未満に生じる若年性認知症もあり、2020年の患者数調査では全国で3.57万人いると推計されました。

原因・症状

認知症の原因は多岐にわたり、原因によって「○○型認知症」「○○による認知症」と表現されます。代表的な原因は以下の通りです。

  • 神経変性疾患(脳に異常なたんぱく質がたまり脳神経細胞が障害される疾患):アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭型認知症など
  • 脳血管障害:脳梗塞、脳出血、脳の動脈硬化によるものなど
  • その他:正常圧水頭症、感染症、脳腫瘍、アルコールや栄養障害など

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認知症の原因疾患

出典:東京都福祉局高齢者施策推進部在宅支援課「知って安心認知症」( 令和6年3月発行)」

症状は認知機能障害と行動・心理症状(BPSD)に大別されます。原因によって症状も出やすいもの・出にくいものがあります。

  • 認知機能障害:物忘れ、ぼんやり、時間・場所・人物がわからない、言葉が出ないなど
  • 行動・心理症状(BPSD):不安やイライラ、うつ、幻覚や妄想、やる気が出ない、徘徊や暴力など
  • その他:パーキンソン症状、自律神経症状(便秘や立ちくらみなど)

BPSD

検査

原因の診断や重症度の評価のために、複数の検査を組み合わせて行います。

  • 心理検査:ミニメンタルステート検査(MMSE)、FAB(前頭葉機能検査バッテリー)など
  • 画像検査:MRI、脳血流SPECT、ドパミントランスポーターSPECT、心交感神経シンチグラフィ、アミロイドPETなど
  • 検体検査:血液検査、脳脊髄液検査など

治療

多くの認知症は数年~十数年の経過で徐々に進行し、完治することはないため、進行を遅らせることや症状を和らげることが治療の目標になります。認知症の治療において最も重要なのは、生活の見直しと安心して過ごせる環境作りです。ただ、アルツハイマー病に対しては、発症早期に進行を遅らせる薬として、2023年12月にアミロイドβ抗体治療薬であるレカネマブが発売されました。そして、2剤目となるドナネマブ(商品名:ケサンラ®)が2024年11月26日に発売となりました。当院でも投与を行っています。
受診から投与までの流れは以下をご覧ください。
アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度の認知症に対する新薬レカネマブ(レケンビ®)とドナネマブ(ケサンラ®)について

その他の原因による認知症でも、認知機能障害や行動・心理症状に対して内服薬を用いることがあります。

治療の方策として、介護保険サービスの利用も有効です。介護保険については、地域包括支援センターが窓口となっています。

予防

認知症の予防においては、バランスのよい食事、適度な運動、人とのかかわりをもつことが有効といわれています。脳を活性化させる活動(読書、趣味、学習など)や社会活動への参加、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を適切に管理することも役立ちます。早期の診断と介入が重要です。

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