急速進行性腎炎症候群

代表的な症状

健診で尿潜血陽性といわれた(図1)、微熱、関節痛、皮疹、息苦しさなどがある

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図1

疾患概要

急速進行性腎炎症候群は、腎臓の糸球体(フィルターの役割を持つ部分)が急速に炎症を起こし、数週間から数ヶ月で「急速」に腎機能が低下する状態を指します。この状態は糸球体の急激な破壊を伴い、放置すると腎不全や致命的な合併症に至ることがあるため、早期診断と治療が不可欠です。

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原因・症状

急速進行性腎炎症候群の原因は多岐にわたりますが、主に以下のような要因が関与しています。

  • 自己免疫疾患: 自身の免疫系が誤って腎臓の糸球体を攻撃して炎症を引き起こす自己免疫疾患が原因となることがあります。代表的なものとして、ANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:抗好中球細胞質抗体)という自己抗体が原因で腎臓を含む中~小型の血管に炎症を起こすANCA関連血管炎が挙げられます。この病気では腎臓以外にも肺出血や神経炎、皮膚の出血斑も合併することがあります。
  • 感染症: 一部の細菌やウイルス感染が糸球体に炎症を引き起こし、急速進行性腎炎症候群を発症させることがあります。
  • 薬剤反応: 特定の薬剤がアレルギー反応や薬剤性の腎炎を引き起こすことがあります。

検査

尿検査では血尿、タンパク尿を認めます。腎機能が急速に悪化するため血液検査ではクレアチニン値が上昇します。血管の炎症が原因のためCRPが陽性となり、多くの場合、ANCAが上昇します。腎臓以外に血管炎が波及することも多く、全身の画像検査(CT)が必要となることがあります。

治療

急速進行性腎炎症候群の治療は、症状の進行を抑え、腎機能を保護することを目的としています。主な治療方法は以下の通りです。

  • 薬物療法: 主にステロイドや免疫抑制剤が使用されます。これにより炎症を抑え、免疫系の過剰反応を抑制します。感染症が原因の場合、抗菌薬や抗ウイルス薬が必要です。
  • 高血圧管理: 高血圧を抑えるために、降圧薬が処方されることがあります。これにより腎臓への負担を軽減し、病状の悪化を防ぎます。
  • 利尿剤: 浮腫(むくみ)を軽減するために、利尿剤が使用されることがあります。これにより体内の余分な水分を排出します。
  • 食事療法: 塩分や蛋白質の摂取を制限する食事療法が推奨されることがあります。これにより腎臓への負担を軽減し、症状の改善が期待されます。
  • 透析: 腎機能が著しく低下している場合、透析治療が必要です。透析は腎臓の代わりに血液から老廃物を取り除く方法で、腎不全の進行を防ぐために用いられます。病気の原因となる抗体を除去するために血液成分を交換する治療法(血漿交換)をすることもあります。

急速進行性腎炎症候群は症状の進行が非常に速いため、早期に専門医を受診し、適切な治療を受けることが重要です。治療が遅れると、腎機能の回復が難しくなり透析や腎移植が必要となるため、気になる症状が現れた場合は早急に医療機関を受診することが推奨されます。

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