膵がん

代表的な症状

黄疸(皮膚の黄染、濃尿)、糖尿病の急性増悪、腹痛、背部痛、体重減少など

疾患概念

膵がんは膵臓内の膵管(膵液が流れる管)から発生する悪性腫瘍です。日本国内では年間40000人以上の方が膵がんと診断され、その数は増加傾向にあります。

膵がんの5年生存率は10%以下と低く、治療の難しい予後の悪いがんの一つです。年齢が高くなるにつれて膵がんと診断される人の数が増えることから、高齢者が多くかかるがんと言えます。

がんにかかりやすい人・症状

膵がんの危険因子は①膵がんの家族歴がある、②糖尿病や肥満などの生活習慣病がある、③慢性膵炎や膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵嚢胞などの膵疾患がある、⑤喫煙、飲酒などが挙げられます。

膵がんの初発症状は様々です。腹痛や腹部膨満感、体重減少など一般的な症状から、体や目が黄色くなる黄疸症状や背部痛から診断されることもあります。糖尿病の発症時や急な増悪を契機に発見されることもあります。(図1

図1 (膵癌診療ガイドライン2022年度版より)

検査

膵がんの診断にまず行われるべきは腹部超音波検査です。膵管の拡張や膵の嚢胞性変化を低侵襲(身体への負担が少ない方法)で検査することができます。
特に膵がんの危険因子に該当する方は定期的に腹部超音波検査を受ける必要があります。
腹部超音波検査の次に行われる検査は造影剤を使用したCT検査です。CTでは膵がんの診断だけではなく、治療方針の決定に重要な切除可能性を判断します。
また、超音波内視鏡検査(EUS)により腫瘍から組織を採取(生検 FNA)して膵がんの組織型の診断を行います。
閉塞性黄疸を認めている場合には内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)で黄疸の解除を行います。
肝臓への転移等が疑われる場合にはMRI検査を追加することもあります。(図2

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図2

治療

膵がんの治療は検査によって切除可能性分類を判断してから行われます。切除可能性分類は1.切除可能膵がん2.切除不能膵がん3.切除可能境界膵がんの3つに分類されます(図3)。

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図3

  1. 切除可能膵がん
    がんが膵臓周囲の主要動脈(腹腔動脈、総肝動脈、上腸間膜動脈)に接触や浸潤がなく、門脈への180度以下の接触や浸潤を認めるものをいいます。
    切除可能膵がんに対する現在の標準治療は術前補助化学療法(ゲムシタビン+TS1併用療法)後に手術を施行し、術後に術後補助化学療法(TS1単独療法)を行う方法です。このような手術を化学療法で挟む治療法が最も治療効果が高いと考えられています。
  2. 切除不能膵がん
    がんが膵臓周囲の主要動脈(腹腔動脈、総肝動脈、上腸間膜動脈)に180度以上接触浸潤を認めるものや、肝臓や肺への遠隔転移を認めるものを切除不能膵がんと判断します。
    切除不能膵がんの治療は抗がん剤治療が中心になります。近年、膵がんに対する抗がん剤の治療選択肢が増えています。特に高齢者はそれらの治療選択肢の中から、体調に合わせて最適な治療法を選択していきます。
  3. 切除可能境界膵がん
    切除可能境界膵がんに対しては標準治療が明確にされていません。一般に手術治療では取り切れない可能性が高く、再発率も高いため抗がん剤による治療を先行することが多いです。
    一定期間(数ヶ月)の抗がん剤治療を行った後に、CTなどでがんの状態を評価し切除が可能と判断した場合に手術の適応となります。手術後は術後補助化学療法をおこないます。

いずれの分類による治療においても、特に高齢者では抗がん剤治療や手術治療に対する耐性が個人によって大きく異なります。
場合によっては術前補助化学療法をおこなわず、手術治療を先行するなど個々人に適した治療法を選択することがあります。

膵がんに対する手術は、がんのできた場所によって手術の方法が変わります。膵頭部領域にがんが発生した場合は膵頭十二指腸切除術が、膵体部から尾部にがんが発生した場合は尾側膵切除術がそれぞれ適応になります(図4)。
門脈など周囲血管にがんの浸潤が見られる場合には合併切除を行う場合もあります。

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図4

一般的に膵臓の手術は高難度手術に分類され、体にかかる負担も大きくなります。特に高齢者では、日常生活活動度(ADL)を落とさないように、術後早期にリハビリを開始することがとても重要になります(図5)。

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図5

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