第178号

手術支援ロボット「ダヴィンチ」による手術を開始しました

ロボット支援手術:Da Vinci Surgical System™ Xi導入にあたって

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手術支援ロボット「ダヴィンチ」による手術を開始しました

副院長/呼吸器外科部長 安樂真樹(あんらくまさき)

anrakumasaki

ロボット支援下肺切除手術を開始しました

近年、医療技術は日々進化しており、外科手術の分野でも患者さんの負担を軽減するための医療機器が開発されています。「低侵襲手術」は、身体への負担を最小限に抑え、術後の回復を早めることを目的とした治療法として注目されています。当センターでは、Da Vinci Surgical System™ Xi(Intuitive Surgical 社) を導入し、患者さんにとってさらに優しい治療を目指した新たな取り組みとして、2024 年10 月よりロボット支援下手術を開始しました。この取り組みについて、今回詳しくご紹介します。

低侵襲手術のメリットは?

ロボット支援下手術の最大の特徴は、多関節の鉗子でより精度と自由度の高い手術操作が行えることと、手術を三次元的な視野で行えるシステムにあります(写真1)。また手術で用いる鉗子は1cm 程度の小さな傷から挿入しますので、従来の手術に比べ以下のようなメリットが期待されます。

写真1:
Da Vinci Surgical System™ Xiロボットアーム(写真左側)
サージャンコンソール(写真中央:外科医はビデオカメラによる3次元画像を見ながら手術を行います)
ロボットの手術鉗子を動かす外科医の手元のイメージです(写真右上)
手術鉗子は関節が複数あり自由度の高い動きが可能です(写真右下)

  • 術後の創痛が軽減 従来の胸腔鏡手術や開胸手術では、肋骨の開排や器具の動きによる負担が術後の痛みの原因となることがありました。一方、ロボット支援下手術では、肋間への負担を軽減することで術後の痛みが和らぎます。
  • 回復が早い 患者さんの身体への負担が少ないため、日常生活への復帰が早まり、入院期間が短縮されます。一般的には、入院期間は5 ~ 8 日程度です。
  • 安全性の向上 三次元視野のもと、血管や気管支などの繊細な部分の操作が可能となり、正確で安全な手技が実現します。

一方で、ロボット支援下手術にはさらなるエビデンス(多くの患者さんから得られるデータ)の蓄積が必要とされています。当センターでは、この技術を積極的に取り入れながら、患者さんにとって最適な治療を提供してまいります。

ロボット支援下手術は保険診療です

呼吸器外科の領域では、2018 年に「肺悪性腫瘍に対する胸腔鏡下肺葉切除術」や「胸腔鏡下縦隔腫瘍切除術」が国民皆保険の適用となりました。さらに2020 年には、「肺悪性腫瘍に対する区域切除」や「良性・悪性縦隔腫瘍に対する手術」も保険適用となり、より多くの患者さんがこの高度な低侵襲手術を受けられる環境が整いました。当センターでは、保険診療の範囲内で、患者さんに最先端の技術を用いた治療を提供しています。

ロボット支援下手術の適応

ロボット支援下手術の対象は、手術による根治が期待できるステージI 期およびII 期の患者さんが基本です。これらの患者さんは、がんが局所にとどまり、切除によって治癒が可能なケースが多いためです。
また、ステージIII 期の一部の患者さんについても、慎重な検討のもとで手術が適応される場合があります。この場合、がんの進行度や患者さんの全身状態、術後の治療計画を考慮して適応を判断します。具体的な適応や手術の詳細については、担当医にご相談ください。

傷の大きさ

患者さんへの身体的負担を最小限に抑えながらも、根治性(治癒、治すことを目指す治療)と安全性を重視した手術を行っています。手術の傷は4 ~5 か所で、約4cm 大の傷が1 か所と、3 ~ 4 か所の小さな穴(ポート)を使用して手術を行います。

専門的なトレーニングを受けたチーム体制

当センターでは、ロボット支援下手術を行うための専門資格を持つ医師や、アシスタントとして補助する医師、看護師、臨床工学技士がチームを組み、患者さんにとって安全で確実な手術を提供しています(写真2)。これにより、複雑な症例にも対応できる柔軟な体制を整えています。

東京都健康長寿医療センターが目指す肺癌外科治療の未来

高齢者を中心としたがん治療に力を注いでおり、今回のロボット支援下手術の導入により、これまで以上に患者さんに寄り添った医療を提供できるようになりました。また、地域の医療機関や医師会との連携を通じて、最新技術を共有しながら医療の質を向上させることを目指しています。
これからも、患者さんの声に耳を傾けながら、新しい技術を積極的に取り入れ、安全で信頼できる医療を提供していきます。手術の詳細や今後の展望については、写真やデータを交えながら広報誌でお伝えしてまいります。