大都市高齢者基盤研究

「日常生活における支え合いに関する調査」について
 この調査は、国の科学研究費助成事業(JSPS科研費19H01604)の助成を受けた学術調査です。
 本調査は、世論調査・統計調査の専門機関である一般社団法人新情報センターに委託をしております。
【調査実施期間】令和2年12月2日(水)~12月25日(金)を予定しております。
 詳細は、一般社団法人新情報センターのHPをご参照ください。

メンバー

リーダー 研究副部長 小林 江里香
研究員 村山 陽
非常勤研究員 山口 淳
特別研究員 岡本翔平(日本学術振興会)
非常勤職員 三津田 悠(研究補助)

キーワード

就労、ボランティア、家族、地域社会、ワーク・ライフ・バランス、世代間関係、次世代支援、健康、ウェルビーイング、地域住民調査、独居、社会的孤立

主な研究

  1. 高齢期のワーク・ライフ・バランス推進のための課題の明確化
  2. 世代間支援の実態と効果の解明
  3. 単身者と社会的孤立に関する基礎的研究

研究紹介

本テーマでは、地域住民の大規模調査データの収集や分析を行い、大都市の高齢者が、家族を含む社会とのつながりの中で抱える課題を、多面的かつ客観的に検討することで、社会の変化に即した政策提言を行うことを目指しています(平成30年度新設)。

1.高齢期のワーク・ライフ・バランス推進のための課題の明確化

少子高齢化が急速に進む中、高齢者の就労促進は重要な政策的課題であり、実際に、この10年間で60代の就業率は大きく上昇しました。働く高齢者の増加や、仕事からの引退年齢の上昇は、今後も進むと予想されます。しかし、高齢者に期待されている役割は、就労だけでなく、ボランティア、家事、孫の世話、介護など、地域・家庭内にも様々あり、趣味・学習活動や友人との交流を楽しみたい高齢者も多くいます。仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)をどのようにはかるかは、若い世代だけでなく、中高年世代にとっての課題にもなりつつあります。

就労参加は高齢者の生きがいや経済的安定を高めることが期待される一方、時間的に余裕のない高齢者が増えることで地域活動の担い手が不足したり、退職年齢の高齢化によって、引退後の生活の再構築が難しくなるのではという懸念もあります。特に、生活の場と労働の場が分かれる(職住分離)傾向にあり、近隣とのつながりが希薄な大都市では大きな問題です。

そこで、本テーマでは、まず、高齢者の就労参加(雇用延長や再就職)が地域活動への参加に与える影響について検証し、就労と地域活動を両立するために必要な方策を検討します。さらに、高齢期には、どのような活動にどの程度参加するのが健康維持やウェルビーイング(幸福感や生活満足度)にとって良いのかを、就労だけでなく、地域・家庭内活動とのバランスも考慮しながら明らかにします。

これらの課題に取り組むため、全国高齢者(60歳以上の無作為抽出標本)の長期縦断研究(JAHEAD; https://www2.tmig.or.jp/jahead/)や、東京都内・近郊の市に居住する中・高年者を対象とした社会調査のデータ解析などを行います。

2.世代間支援の実態と効果の解明

家族の多様化や地域社会の変化は、世代間互助(世代間の助け合い)のあり方を大きく変えようとしています。本テーマでは、親族内・親族外(主に地域)における高齢者と次世代との関係についての基礎的なデータを蓄積し、世代間関係の実態を明らかにするとともに、高齢者の次世代への支援提供が、高齢者自身や地域社会にもたらす効果を検証します。本研究の成果は、世代間の互助・共助を推進する制度・政策が、実証的な裏付けに基づき、社会の変化に対応したものとなることに寄与する資料となることが期待されます。

  1. 親族内での世代間関係
    高齢者とその子どもや孫との間での支援の授受や、子どもとの同居・近居や関連要因について、前述の全国高齢者調査のデータなどを中心に分析を行います。「支援」については、時間やサービスを直接提供する支援(孫の世話、介護など)だけでなく、情緒的な支援(心配事を聴くなど)や経済的な支援も含めて検討し、高齢者が子どもに対して行った支援が、高齢者が子どもから受ける支援にどのような影響を与えるのかといった、互恵性に注目しています。
  2. 地域における世代間関係
    核家族化や近隣関係の希薄化が進む都市部では、母親の育児不安や孤立が問題となっていることから、特に注目しているのは高齢者による「地域の子育て支援」です。これには、子どもの安全・健全な成長のための支援(挨拶・声かけなど)や、親に対する情緒的支援(ねぎらう、相談にのるなど)、手段的支援(子どもを預かるなど)が含まれます。(小林ほか, 日本公衆衛生雑誌, 63(3), 2016)このような次世代支援行動や、高齢者と若い世代との交流の促進(抑制)要因となる、個人や地域の特徴を明らかにします。また、世代間交流・次世代支援が高齢者の心身の健康に与える効果やその個人差の問題、地域住民への効果についても検証していきます。
    地域における世代間関係の分析には、幅広い世代を対象とした多世代調査のデータを使用し、高齢者側だけでなく若い世代の側からの検討も行います。

3.単身者と社会的孤立に関する基礎的研究

 単身世帯の高齢者は増加しており、東京では65歳以上の4人に1人が一人暮らしです(厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」)。単身高齢者では、配偶者と死別した女性の割合が高いものの、未婚で子どものいない単身者や、男性の単身者も増加傾向にあります。独居がただちに社会的孤立に結びつくわけではありませんが、同居家族のいない人が地域社会との交流も乏しいと、健康状態が悪化したり、災害が発生したりして支援が必要になったときに、十分な支援を得られない可能性が高まります。
 その一方で、都市部では近所づきあいは全般的に希薄であり、特に子育てを介して近所づきあいを発展させる機会をもたない子どものいない人にとっては、地域ネットワークの構築は容易ではありません。また、高齢者支援の現場では、客観的には援助が必要な状態であっても、自ら援助を要請しない人や、援助を拒む人がおり、支援の遅れにつながるという問題が指摘されています。
 そこで、本テーマでは、都市部の単身者の地域ネットワーク構築を促すために有効な方策と、援助要請の促進・阻害要因について、50代以上の中高年単身者を対象としたフォーカスグループインタビュー、半構造化面接調査、郵送調査などの質的・量的データの収集・分析を通して明らかにします。さらに、JAHEADなど既存の縦断調査データの解析により、独居や社会的孤立が心身の健康に与える影響についても検討します。

過去3年間の主要文献

  1. Murayama Y, Yamazaki S, Yamaguchi J, Hasebe M, Fujiwara Y: Chronic stressors, stress coping, and depressive tendencies among the elderly. Geriatrics & Gerontology International, 20(4), 297-303, 2020. https://doi.org/10.1111/ggi.13870
  2. 村山陽・藤原佳典:介入研究 (第4章) 近藤克則編著 「ソーシャル・キャピタルと健康・福祉」ミネルヴァ書房. pp.63-88, 2020.
  3. 村山陽, 長谷部雅美, 高橋知也, 小林江里香:首都圏に居住する単身世帯の中高年者における近隣との世代間交流の必要性の認識-同居世帯の中高年者との比較から. 日本世代間交流学会誌, 9(1), 3-11, 2019.
  4. Murayama, Y., Murayama, H., Hasebe, M., Yamaguchi, J. & Fujiwara, Y.: The impact of intergenerational programs on social capital in Japan: A randomized population-based cross-sectional study, BMC Public health, 19:156, 2019. https://doi.org/10.1186/s12889-019-6480-3
  5. Kobayashi E, Sugihara Y, Fukaya T, Liang J: Volunteering among Japanese older adults: How are hours of paid work and unpaid work for family associated with volunteer participation? Ageing and Society, 39(11), 2420-2442, 2019. https://doi.org/10.1017/S0144686X18000545
  6. Okamoto, S.: Socioeconomic factors and the risk of cognitive decline among the elderly population in Japan. International Journal of Geriatric Psychiatry, 34(2), 265-271, 2019. https://doi.org/10.1002/gps.5015
  7. 原田謙,小林江里香:高齢就業者の職場における世代間関係と精神的健康;媒介変数としての職場満足度. 老年社会科学, 41(3), 306-313, 2019.
  8. 原田謙, 小林江里香, 深谷太郎, 村山陽, 高橋知也, 藤原佳典:高齢者の若年者に対する否定的態度に関連する要因;世代間関係における「もうひとつのエイジズム」.老年社会科学, 41(1), 28-37, 2019.
  9. 村山陽, 竹内瑠美, 山口淳, 倉岡正高,藤原佳典:高等学校教師の地域住民への関わり意識に及ぼす要因について. 日本世代間交流学会誌, 8(1), 3-9, 2018.
  10. 村山陽, 山口淳, 山﨑幸子, 藤原佳典:高齢者における慢性型ストレッサーの特徴, Journal of Health Psychology Research, 31(1), 21-30, 2018.
    https://doi.org/10.11560/jhpr.170407085
  11. 小林江里香,野中久美子,倉岡正高,松永博子,村山幸子,田中元基,根本裕太,村山洋史,渡辺修一郎,稲葉陽二,藤原佳典:「地域の子育て支援行動尺度」の多世代への適用可能性と支援行動の世代別特徴. 日本公衆衛生雑誌, 65(7), 321-333, 2018. https://doi.org/10.11236/jph.65.7_321
  12. 村山陽:地域における世代間交流の可能性と課題 (論壇), 老年社会科学, 39(4), 460-466, 2018.
  13. 村山陽, 長谷部雅美, 山口淳, 高橋知也, 村山幸子, 藤原佳典:世代間援助における互恵性の検討, 日本世代間交流学会誌, 7(1), 15-22, 2018.
  14. Okamoto, S., Okamura, T., & Komamura, K.: Employment and health after retirement in Japanese men. Bulletin of the World Health Organization, 96(12), 826-833, 2018. https://doi.org/10.2471/BLT.18.215764
  15. 小林江里香:「長寿社会における中高年者の暮らし方の調査」-全国高齢者の健康と生活に関する長期縦断研究の裏側から-. 日本世論調査協会報「よろん」, 120号, 46-51, 2017.  https://doi.org/10.18969/yoron.120.0_46
  16. 小林江里香:高齢者の社会参加の動向-地域包括ケアにおける支援提供者としての役割に着目して. Geriatric Medicine, 55(2), 139-143, 2017.
  17. 村山陽:子どもとふれ合うことによる高齢者の感情体験 (第7章) 草野篤子・溝邊和成・内田勇人・安永正史・山之口俊子編 「世界標準としての世代間交流のこれから」三学出版. pp.220-233, 2017.
  18. 村山陽, 竹内瑠美, 山口淳,山上徹也, 金田利子, 多湖光宗, 藤原佳典:幼老複合施設における世代間交流の可能性と課題 (特集 世代間の葛藤と多世代共生), 老年社会科学, 38(4), 427-436, 2017.