社会参加と社会貢献研究

メンバー

リーダー

研究副部長 村山 洋史

研究員 

鈴木 宏幸、野中 久美子、桜井 良太、高橋 知也、小川 将(プロジェクト)

技術員

雛倉 圭吾(プロジェクト)

非常勤研究員・非常勤職員

浅見 素子、飯塚 あい、伊藤 晃碧、大辻 みずき、尾田 恵、川窪 貴代、齋藤 尚子、斎藤 みほ、杉浦 圭子、須田 拓実、須藤 修司、高瀬 麻似、長 大介、土谷 利仁、芳賀 輝子、服部 真治、藤平 杏子、古谷 友希、松永 博子、三浦 有花、三林 ゆい、村山 幸子、矢野 拓洋、横山 晃子、吉川 紀子、李岩、渡邉 彩

認知症未来社会創造センター研究員

佐藤 研一郎、高橋 佳史、山城 大地

プロジェクトスタッフ

チーム独自ホームページに掲載

キーワード

プロダクティブエイジング、社会参加、社会貢献、世代間交流、多世代共創、社会的孤立、ソーシャルキャピタル

主な研究

1 プロダクティブエイジングの促進に資する各種プログラム・システム開発

(a)就労支援に資する研究

(b)ボランティア・生涯学習促進に資する研究

(c)多世代共生に資する研究

2 社会参加が健康に影響を与える心身社会的機序の解明と新たな健康度の評価手法の開発

研究紹介

 私たちの描く未来-基本ビジョンは「高齢者が導く持続可能な多世代共生社会の実現」です。基本理念は、「高齢者によし、若年者によし、世間(社会)に良し」の「三方良し」です。その実現に向けて、20年、30年先を見据えた長期的目標として、《A》健康度に応じた高齢者のシームレスな社会参加が可能な地域社会の実現、《B》良好な世代間関係構築に寄与する社会貢献が可能な地域社会の実現、を掲げています。
 更に、具体的なステップとして、5年間(2018~23年度)に達成すべき3つの中期目標:【1】多様な社会参加の機会の増加、【2】社会参加による健康維持・増進、【3】世代間の相互理解・互助の促進を設定しました。それらを達成するために、以下の研究に取り組んでいます。
【基本ビジョンと第三期中期計画】
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 研究体制は、(A)プロダクティブエイジングの促進に資するプログラムやシステムを開発する実践的研究と、(B)社会参加が健康に影響を与える心身社会的機序(メカニズム)の解明および評価手法に関する基盤的研究(社会参加‐健康関連メカニズム・評価手法研究G)に大別され、相互に連動しています。なお、(A)については、高齢者の機能的健康度に応じた社会参加活動に関連して、(a)就労支援研究G、(b)ボランティア・生涯学習促進研究G、(c)多世代共生研究Gの3つのグループに分かれていますが、生きがい就労や世代間交流ボランティアといった境界領域の活動についても分野横断的に連携しながら研究を進めています。
【健康度に応じた社会参加活動と中期計画の研究体制】

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 具体的な研究課題は以下の四点です。
1 (a)就労支援研究は、有識者による研究会(ESSENCE研究会と称すhttps://sites.google.com/site/elderlyemployment/)や各種コホート調査および雇用者調査を通して、高齢者と社会にとって望ましい「働き方」とその支援策を提示します。加えて、社会的ニーズの極めて高い福祉系業種への就労を勧奨する手立てについて検討します。特に、介護の周辺業務(準備、整理、誘導など)を短時間担う高齢介護助手の実態や多面的効果についての研究に取り組んでいます。これらの研究成果を自治体のいきがい就労支援紹介事業に反映しています。
【高齢期の就業が生活機能の維持に及ぼす影響】
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1 (b)ボランティア・生涯学習促進研究は、絵本読み聞かせプログラムの進展および多様な新規プログラムの開発・応用を通して、(1)生涯学習を通じた健康維持・増進プログラム、更には社会貢献へと進展するプログラムの開発と実装、(2)社会参加活動の自主化および長期継続要因と支援策の提示、(3)社会参加活動の波及効果を検証してきました。絵本読み聞かせプログラムは、首都圏を中心に17自治体と協働し展開しています。また、プログラム受講後に自主運営を継続している団体の多くは、NPOりぷりんと・ネットワークに加入し、子どもへの読み聞かせボランティアとして活躍するとともに高齢者ボランティアの様々な課題についての研究に協力を頂いています。
【三方良し】
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また、新たに生涯学習促進研究として、初心者向け囲碁プログラムを開発し認知機能や脳機能への効果を検証しています。
【新規学習(囲碁ルールの習得)はその内容と関連する脳機能の向上に寄与する】
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1 (c)多世代共生研究は、三層からなる多世代交流と互助の仕組みの構築を目指して「場やプログラム」、「人材」、「ツール」の側面からそれぞれ好事例・要件を提示します。併せて、首都圏自治体におけるアクションリサーチを通じて、それらをコーディネートするサイトや研修プログラムを開発しています。具体的には、住民間互助を促す多世代交流拠点の運営方法の解明に関する量的調査(サロンの継続・消滅要因の検討)と質的調査(都市部サロンの運営手法の深堀調査)、住民主体の生活支援活動を生み出す協議体立上げの機序解明を目的に、先駆的自治体への調査、住民主体の有償・無償ボランティアの運営者と利用者への調査を実施しています。
【多世代交流と互助の仕組み(多世代型介護予防・日常生活支援総合事業プロジェクト)の全体イメージ】
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2 社会参加‐健康関連メカニズム・評価手法研究は、まず、いわゆる「社会的フレイル」こと、フレイルの社会的側面の概念を明らかにします。方法は高齢者の社会参加・交流と健康の因果関係について、様々な郵送調査や健康調査および実験室的調査(ヒトおよび動物レベル)の両面から検討し、その背景メカニズムについて解明します。例えば、地域在住高齢者を対象とした縦断調査から、「閉じこもり」と「孤立」の単独あるいは重積した影響を示しました。また、「独居」や「孤食」が直接、健康に影響を与えるのではなく、社会的ネットワーク(他者との交流の幅)が介在していることも明らかにしました。更に、社会参加を阻害する要因として、歩行や感覚器等との関連を検討します。また、今後のコミュニケーション方法の変容を見据えて、SNS利用と健康度の関連を明らかにします。

評価手法研究については、私たちが、開発した軽度認知機能低下(MCI)のスクリーニング尺度Montreal Cognitive Assessment(MoCA)の日本語版MoCA-J(Fujiwara&Suzuki他, 2010)は、臨床現場でも活用される一方で、地域での応用も広がっています。この経験を踏まえて、ICTを用いるなど、できるだけ被検者に負担が少なく感度・特異度の高い新規の検査を開発しています。
【閉じこもり傾向と孤立が重積すると死亡リスクが高まる】
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2021年度の主要業績

  1. Murayama H, Liang J, Shaw BA, Botoseneanu A, Kobayashi E, Fukaya T, Shinkai S. Short-, medium-, and long-term weight changes and all-cause mortality in old age: Findings from the National Survey of the Japanese Elderly. Journal of Gerontology Series A: Biological Sciences & Medical Sciences 2021; 76(11): 2039-2046.
  2. Murayama H, Okubo R, Tabuchi T. Increase in social isolation during the COVID-19 pandemic and its association with mental health: Findings from the JACSIS 2020 study. International Journal of Environmental Research and Public Health 2021; 18(16): 8238.
  3. Murayama H, Nakamoto I, Tabuchi T. Social capital and COVID-19 deaths: An ecological analysis in Japan. International Journal of Environmental Research and Public Health 2021; 18(20): 10982.
  4. Murayama H, Takahashi Y, Shimada S. Effectiveness of an out-of-pocket cost removal intervention on health check attendance in Japan. International Journal of Environmental Research and Public Health 2021; 18(11): 5612.
  5. Sakurai R, Fujiwara Y, Suzuki H, Ogawa S, Higuchi T, Imanaka K. Changes in self-estimated step-over ability among older adults: A 3-year follow-up study, Journals of Gerontology Series B: Psychological Sciences & Social Sciences 2021; 76(10): 2003-2012.
  6. Sakurai R, Kim Y, Inagaki H, Tokumaru AM, Sakurai K, Shimoji K, Kitamura A, Watanabe Y, Shinkai S, Awata S. MMSE cut-off discriminates hippocampal atrophy: Neural evidence for the cut-off of 24 points. Journal of American Geriatric Society 2021; 69(3): 839-841.
  7. Sakurai R, Nemoto Y, Matsunaga H, Fujiwara Y. Who is mentally healthy? Mental health profiles of Japanese social networking service users with a focus on LINE, Facebook, Twitter, and Instagram. PLoS One 2021; 16(3): e0246090.
  8. Sakurai R, Kodama K, Ozawa Y, Pieruccini-Faria F, Kobayashi-Cuya KE, Ogawa S. Association of age-related cognitive and obstacle avoidance performances. Scientific Reports 2021; 11(1): 12552.
  9. Sakurai R, Montero-Odasso M, Suzuki H, Ogawa S, Fujiwara Y. Motor Imagery Deficits in High-Functioning Older Adults and its Impact on Fear of Falling and Falls. Journal of Gerontology Series A: Biological Sciences and Medical Sciences 2021; 76(9): e228-e234.
  10. Sakurai R, Suzuki H, Ogawa S, Takahashi M, Fujiwara Y. Hearing loss and increased gait variability among older adults. Gait & Posture 2021; 87: 54-58.
  11. Sakurai R, Inagaki H, Tokumaru AM, Sakurai K, Shimoji K, Kobayashi-Cuya KE, Kitamura A, Watanabe Y, Shinkai S, Shuichi A. Differences in the association between white matter hyperintensities and gait performance among older adults with and without cognitive impairment. Geriatrics & Gerontology International 2021; 21(3): 313-320.
  12. Sakurai R, Watanabe S, Mori H, Sagara T, Murayama H, Watanabe S, Higashi K, Fujiwara Y. Older assistant workers in intermediate care facilities and their influence on the physical and mental burden of elderly care staff. BMC Health Service Research 2021; 21(1): 1285.
  13. Iizuka A, Suzuki H, Ogawa S, Takahashi T, Murayama S, Kobayashi M, Fujiwara Y. Association between the frequency of daily intellectual activities and cognitive domains: A cross-sectional study in older adults with complaints of forgetfulness. Brain and Behavior 2021; 11(1): e01923.
  14. Iizuka A, Suzuki H, Ogawa S, Takahashi T, Cho D, Yamashiro D, Sato K, Li Y, Kanabe Y, Kobayashi M, Fujiwara Y. Randomized Controlled Trial of the Picture Book Reading Program on Cognitive Function in Middle-Aged People. Frontiers in Psychiatry 2021; 12: 624487.
  15. Iizuka A, Murayama H, Machida M, Amagasa S, Inoue S, Fujiwara T, Shobugawa Y. Leisure activity variety and brain volume among community-dwelling older adults: Analysis of the Neuron to Environmental Impact across Generations Study Data. Frontiers in Aging Neuroscience. 2021; 13: 758562.
  16. Fujihira K, Hamada Y, Haramura M, Suzuki K, Miyashita M. The effects of different temperatures of post-exercise protein-containing drink on gastric motility and energy intake in healthy young men. British Journal of Nutrition 2021; 127(5): 1-9.
  17. Sakurai R, Kawai H, Yanai S, Suzuki H, Ogawa S, Hirano H, Ihara K, Takahashi M, Kim H, Obuchi S, Fujiwara Y. Gait and age-related hearing loss interactions on global cognition and falls. Laryngoscope 2022; 132(4): 857-863.
  18. 杉浦圭子, 村山洋史, 野中久美子, 長谷部雅美, 藤原佳典. 地域在住高齢者の最長職と現在の就労状況と就労理由の関連に関する研究. 日本公衆衛生雑誌 2022; 69(1): 37-47.
  19. 渡邉彩, 村山洋史, 高瀬麻以, 杉浦圭子, 藤原佳典. 高齢期における就労と主観的健康感の縦断的関連: システマティックレビュー. 日本公衆衛生雑誌 2022; 69(3): 215-224.
  20. 村山幸子, 小林江里香, 倉岡正高, 野中久美子, 安永正史, 田中元基, 根本裕太, 松永博子, 村山陽, 村山洋史, 藤原佳典. 改訂版世代継承性尺度(JGS-R)の作成と信頼性・妥当性の検討. パーソナリティ研究 2022; 30(3): 151-160.
  21. Murayama H, Sugawara I. Can online relationships in social networking services supplement offline relationships during the COVID-19 pandemic? Asia Pacific Journal of Public Health. (in press)