病理診断科では、検査や手術でとられた組織や細胞を顕微鏡で検査して病理診断を行います。病理診断はたいへん重要な検査で、特に腫瘍で良性・悪性を決める場合には最終的な診断となります。病理診断は病理を専門とした医師(病理医)が行います。当センターでは日本専門医機構から認定された病理専門医が3名います(新井、小松、野中)。また、日本臨床細胞学会から認定された細胞診専門医2名(新井、野中)、神経病理の専門医2名(齊藤、松原)がいます。病理検査には、生検、手術検体、細胞診、病理解剖、病理特殊検査があります。正しい病理診断が正しい治療の第一歩であり、迅速かつ正確な診断を心がけ取り組んでいます。
胃、大腸、肺、膵臓などの臓器から内視鏡検査の際に少量の組織をとり顕微鏡で検査します。また、前立腺、肝臓、腎臓、骨髄、甲状腺、乳腺、心臓などの臓器から針で採取したり、皮膚、子宮、リンパ節、神経、筋肉の一部をとって調べます。検査結果がでるまでに2日から約1週間かかります。
胃、大腸、虫垂、胆嚢、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮、乳腺、心臓、脳などを手術で摘出したあとに、詳しく顕微鏡を用いて検査をします。腫瘍の場合は悪性(がん)か良性かを調べます。悪性腫瘍の場合にはどのような組織型でどこまで浸潤しているか、手術で取りきれているかどうかなどを検査します。検査結果が出るまで5日から約10日かかります。
喀痰(たん)、尿、胸水、腹水、脳脊髄液、子宮頸部、胆汁、膵液、嚢胞液などの液状の検体をガラスのプレパラートに貼り付け、顕微鏡で検査します。膵臓、乳腺、甲状腺、リンパ節から針で細胞をとって調べることもあります(穿刺吸引細胞診)。
標本は最初に細胞検査士(スクリーナー)が異常な細胞をみつけて、細胞診専門医と相談して判定を行います。当センターでは日本臨床細胞学会から認定された細胞検査士が4人います(鈴木、白幡、江坂、中島)。
細胞診の判定は一般に陽性、疑陽性、良悪性鑑別困難、陰性の4段階で行われます。細胞診の結果は2、3日以内にでます。
当センターでは、不幸にしてお亡くなりになられた場合にご遺族の方の書面による同意を得て病理解剖(剖検ともよびます)を行うことがあります。病理解剖は直接の死因を明らかにし、臨床診断が正しかったかどうか、治療効果があったかどうかなどを調べます。病理解剖が終わった時点で、担当医から肉眼所見による説明があります。病理解剖報告書がでるまでには約3カ月かかります。当センターで病理解剖が行われたご遺族で、病理解剖報告書をご覧になりたい方は担当医または医療サービス推進課へご連絡ください。また、医学研究へのご協力に同意が得られました検体は、高齢者バイオリソースセンターを通じて医学の発展に利用させて頂いております。
当センターでは、顕微鏡による通常の検査以外に、術中迅速診断、免疫組織化学検査(免疫染色)、蛍光抗体法、電子顕微鏡検査、組織化学検査、in situ hybridization法検査、遺伝子検査などの特殊検査を行っています。
・術中迅速検査は手術中に少量の組織を採取し、凍結切片を作製して直ちに診断して執刀医に報告します。
・免疫組織化学検査(免疫染色)は、抗原・抗体反応を利用して特定のタンパク質などを顕微鏡下で同定するのに用います。細胞の種類や特徴、増殖能(細胞が増える能力)を調べることができ、生検、手術、細胞診のさまざまな検体で行われています。
・蛍光抗体法も抗原抗体反応を利用した検査ですが、確認したいタンパク質などを蛍光で光らせて見えるようにします。腎生検、皮膚生検が対象となります。
・電子顕微鏡は通常の顕微鏡で観察できない細胞内の微細な構造などを超高倍(1,000倍以上)で観察する場合に行います。腎生検、筋神経生検が対象となります。
・組織化学検査は細胞内の酵素活性を顕微鏡で観察するものです。筋生検などが対象となります。
・in situ hybridization検査は、核酸ハイブリッド形成反応を利用して、特定の核酸配列を顕微鏡下で同定するときに用います。リンパ腫、ウイルス感染の検査が対象となります。
・遺伝子検査は、ある治療薬に適応があるかどうかを調べるために行います。