月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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午前 | 山本寛 村野 |
山田 |
山本寛 山田 |
山本寛 齋藤朗 佐塚 |
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午後 | 籠尾 |
山本寛 村野 |
野木森 |
山本寛 山田 |
山本寛 齋藤朗 高齢者肺がん |
呼吸器内科では肺癌(がん)を中心に気管支・肺、胸腔、縦隔の疾患を扱います。呼吸器学会専門医、総合内科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医、老年科専門医の資格を有した医師が、質の高い医療の提供に努めています。当然のことですが、疾患だけを診るのではなく、患者さんの状態やご希望を考慮したうえで検査、治療をするように心がけています。
当院で診断する肺癌患者さんの平均年齢は約80歳です。今日の肺癌診療においては、75歳以上の方を「高齢者」と考えますから、当院の肺がん患者さんのほとんどが「高齢者」となります。標準的治療とされる各種の治療法は70歳以下の患者さんのデータに基づいて決められたもので、75歳以上の方にそのままあてはめることはできません。つまり、肺癌の治療を受ける方のほとんどが、明確なデータに乏しい治療をうけることになります。当院では、これまでに得られている臨床試験の結果をもとに導きだされた、いわゆる「標準治療」を基本としつつ、高齢者機能評価という手法を用いて、患者さんの身体機能、精神・心理機能、社会生活状況を含めた全体像を把握させて頂き、それをもとに、ご本人にあった治療法の選択肢を、ある程度明確な根拠をもってご提示します。副作用が比較的軽く、日常生活と両立可能な薬物療法をご提案することもありますし、根治を目指した手術をご提案できる方もいます。薬物療法をむやみに行わないほうがよい、と判断される方もいます。「いまの生活をできるだけ長く続けられる」方法を、患者さんの元気さ、合併症の有無、ご本人・ご家族のご希望・価値観などを考慮し、患者さんとよく話し合った上で決めていきますのでご安心ください。
診断は、主に気管支鏡検査で行っています。まず、検査中は鎮静剤や鎮痛剤を使用し、患者さまの苦痛を最小限にするよう努力しています。肺の奥にある病変は直接目で見えません。事前にCT画像を撮影し、どの気管支をたどっていけばよいのか、その経路を3D画像として作成しておきます(図1)。
図1:CT画像から作成した3D画像をもとに気管支鏡を誘導する
検査中はこの画像を参照しながら、目的とする病変に向けて正確に超音波を出す細い管(プローブ)を誘導します。病変までこのプローブの先端を誘導したら、そこで超音波画像を確認し、確実に病変の中にプローブ先端があることを確認します。あとはそこで組織を採取するだけです。これをガイドシース併用気管支腔内超音波断層法 (EBUS-GS)(図2)といいますが、病変を見ながら組織を採取できるため、より正確な検査ができます。そして結果的に、病変以外の部位で不必要に組織をとったり、長時間透視を用いて病変を探す必要もありませんので、患者さまへの負担は少なくなります。さらに、この方法を用いた方が術中の出血が少ないというメリットもあります。
図2:ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法 (EBUS-GS)
また、気管支の裏に隠れて見えないリンパ節も、超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)(図3)を行えば、超音波で病変を同定し、気管支の壁越しに組織を採取することも可能です。
図3:超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)
さらに最近では、検査中に得た細胞をその場で染色し、目的とする細胞(特にがん細胞)がきちんと採取できているかどうかを確認するようにしています。これをROSE (rapid on-site evaluation)と言いますが、検査中に目的にかなった検査が行えているかどうかを確認しながら検査を進めるため、診断の確実性が高まります。通常、採取した組織の結果が出るまでに1-2週間はかかりますが、その結果、もし期待した結果が得られていなかった場合は、改めて同じ検査をしなければいけないという事態も起こりえます。最悪の場合、月単位で診断が得られないこともありえます。ROSEを行うことによって、ほとんどの場合は1回の検査で診断に必要な検体量を確保することができ、結果、患者さまの検査負担は少なくなり、しかも診断の遅れを可能な限り防ぐことができます。
気管支鏡検査を行わなくても、皮膚の上から生検針を刺し、組織を採取できる場合もあります。この場合も、局所麻酔を行った上で、CTあるいは超音波で病変を同定し、生検針を用いて組織を採取します(図4)。当院では、症例を選んで、被爆の少ない超音波ガイド下生検を積極的に行っています。
図4:エコーガイド下経皮生検
COPDは喫煙や粉塵曝露の影響で気道が狭くなる疾患です。ほとんどの患者さんは肺が破壊されて、「肺気腫」という、肺がスカスカの状態になります。軽いうちはほとんど自覚症状がなく、咳、痰、呼吸困難といった症状が出てきたときにはかなり進行しています。最も有効な治療は「いますぐ禁煙」です。本数を減らしても、軽いタバコに替えても、効果はありません。一刻も早くやめることで、肺の機能をより長持ちさせることができます。残念ながら、当院に禁煙外来は開設されていませんが、スモーカライザーも用いた禁煙指導を熱心に行っています。COPDの薬物治療は、主に症状の改善と急性増悪(ご病状が急に悪化すること)の予防を目的としていますが、近年はこの領域の進歩がめざましく、ご高齢の方でも比較的続けやすい吸入療法を選んで提案してまいります。またCOPDの患者さんでは、日常生活における身体活動度がその後の病状経過を大きく左右することがわかっています。そこで、ご高齢の方でも可能な身体活動プログラムを患者さんごとに提案してまいります。急性増悪の際には、入院治療を含めて迅速に対応していきます。
高齢の気管支喘息患者さんは、結核の既往があったりCOPDが合併していたりで、肺の機能が著しく低下している場合があります。また、真菌(カビ)の感作をうけて難治化している場合もあります。難治例が多いとされていますが、基本的な治療方針は副腎皮質ステロイドと気管支拡張薬の合剤を吸入する治療法であり、一般成人と変わりありません。ただ、低肺機能のため効果的な吸入ができなかったり、吸入動作が複雑で覚えにくかったり、手足の不自由さのため器具が扱いにくかったり、といった、確実な吸入療法を行っていくための的確な指導や社会の下支えを必要としているケースが多いと考えています。当院では、患者さんの吸入療法の問題点を明確にし、必要なサポートを提案して参ります。高齢者の場合、多くの合併症があり、多くの薬剤が投与されている患者さんが多く、薬の副作用・相互作用にも配慮することが必要です。また、喘息が増悪した場合、副腎皮質ステロイドの内服を緊急避難的に行うことが通例ですが、ステロイド療法のデメリットは高齢者ほど大きいと言えます。重症・難治例については、患者さんごとの特徴をみきわめた上で、「生物学的製剤」と呼ばれる薬剤を用いることもあります。重篤な発作の際は入院も考慮し、十分な治療を行います。
薬剤性肺炎、過敏性肺臓炎などアレルギー性機序がはっきりしている場合は抗原からの隔離や副腎皮質ステロイドの内服・注射など、迅速に対応しています。関節リウマチなど、膠原病に合併した間質性肺炎には、当院膠原病科と連携して対応しています。原因のはっきりしない間質性肺炎に対する治療法は残念ながら確立されていませんが、条件があえば、進行をゆるやかにする「抗線維化薬」による治療も行なっています。急性増悪時は入院のうえ、副腎皮質ステロイドの注射や呼吸管理など迅速に対応しています。
当院に入院する肺炎患者さんの平均年齢は約80歳で、そのほとんどが誤嚥(ごえん)性肺炎(誤嚥性肺炎)です。脳梗塞の既往、認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患、入眠剤の内服、廃用による喉頭挙上不全などにより、高齢者の嚥下機能は低下しています。さらに、高齢者では嚥下(えんげ)反射・咳反射が低下しており、そのため、(不思議に思われるかもしれませんが)食事でむせない方でも誤嚥性肺炎になります。いろいろな薬を内服されている方の中には薬剤の副作用として嚥下反射が低下していたり口腔内分泌が減少している方も多く見られます。インフルエンザワクチンの接種や肺炎球菌ワクチンの接種は肺炎の予防に有効ですが、それだけで高齢者の肺炎を予防することはできません。当科では「誤嚥はしても肺炎になりにくくする」ための生活指導や嚥下体操、ときには内服薬の中止も積極的にお勧めし、肺炎の予防とともに生活機能の維持・向上をはかるよう心がけています。
しかし高齢者では、基礎体力が低下しており、心臓・腎臓・肺などの合併症をお持ちの方も多いため、残念ながら肺炎でお亡くなりになる患者さんが多いのも事実です。また、誤嚥は常に繰り返しおきているため、高齢者では肺炎を常時患っていると考えておくことも重要です。実際に臨床症状(発熱や呼吸困難)が現れたときにはすでに重症ということが多いのも、高齢者の肺炎で死亡率が高い要因の一つになっています。それだけに、早期発見と発症時の迅速な対応が必要です。当院では入院の受け入れ(内科系各科)、抗菌薬の選択、呼吸管理など、高齢者を取り巻く環境や肺生理に基づく総合的な対応を行なっています。
睡眠中に無呼吸あるいは低呼吸となる睡眠時無呼吸(低呼吸)症候群(1時間あたり5回以上の無呼吸・低呼吸が認められる)は、高齢者の20%以上でみられ、夜間の頻尿や断眠、日中の眠気の原因になります。こうした症状の原因に無呼吸があるとは、なかなか気づかれないものです。重症(1時間あたり30回以上の無呼吸・低呼吸が認められる)の場合は、その後に脳卒中や心筋梗塞といった重大な疾患に罹患するおそれが高くなるとさえ言われています。鼻マスク持続陽圧呼吸(nasal CPAP)療法を行うと、多くの患者さんで自覚症状の改善が得られます。諸々の理由で、実際に治療できる方は限られますが、症状がある方には一度簡単な検査を受けて頂き、この病態が疑わしい場合にはさらに精密な検査(睡眠ポリグラフ)を行って治療の適応を評価します。
肺の術後や肺結核の既往、COPD、間質性肺炎、気管支拡張症などで呼吸機能が低下すると、空気中の酸素だけでは足りず酸素吸入を必要とすることがあります。HOTは自宅にいながらにして酸素吸入を受けられる治療で、現在、当科でも100名前後の方がこの治療を受けながら日常生活を送られています。この治療を受けるには厳格な適応基準がありますので、呼吸が苦しくてもHOTを受けられない(あるいは受けない方がよい)こともあります。また月に1回の外来通院が必要になりますので、移動が困難となったご高齢の方、その介護をされる方にとっては大変負担が大きくなることも事実です。当科では地域医療機関と連携し、在宅酸素の管理をお近くの医療機関で行っていただけるように調整しています。高齢者ではせっかくHOTを導入しても有効にお使いになれない患者さんが少なからずいらっしゃいます。定期的に病状、酸素流量、機器の取り扱い、呼吸法などの項目をチェックすることにより、問題点を早期に発見し対処することが出来ます。換気機能が低下し、高炭酸ガス血症を呈した慢性II型呼吸不全に対しては、非侵襲的陽圧換気療(NPPV)も症例を選んで実施しています。
内科総括部長(呼吸器内科部長(診療科長)兼務)
やまもと ひろし
出身大学 | 東京大学 |
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卒業年次 | 平成9年 |
専門 | 呼吸器疾患全般、高齢者肺癌 |
担当外来/担当診療科 | 呼吸器内科 |
資格 | 日本内科学会 総合内科専門医 日本呼吸器学会 呼吸器専門医・指導医 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・指導医 日本老年医学会 老年科専門医・指導医・代議員 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 東京都身体障害者福祉法第15条指定医 (呼吸器機能障害) 東京大学医学部生理学教室非常勤講師 |
コメント | 2024年~2025年のベストドクターズ(Best Doctors in Japan)※に選出されました。 ※ベストドクターズは、医師に「ご自身またはご家族が、ご自身の専門分野である病気に罹患した場合、自分以外の誰に治療を委ねるか」という観点から、同一または関連専門分野の他の医師が評価する、という手法により選び抜かれた医師です。各専門分野のベストドクターが、現在、日本で7,073名登録されています。(2024年6月現在) |
呼吸器内科専門部長
やまだ ひろかず
出身大学 | 山梨医科大学 |
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卒業年次 | 平成4年 |
専門 | 呼吸器疾患全般、アレルギー疾患、膠原病、びまん性肺疾患 |
担当外来/担当診療科 | 呼吸器内科 |
資格 | 日本内科学会内科認定医 日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医 日本アレルギー学会アレルギー専門医・指導医 日本リウマチ学会リウマチ専門医 日本医師会認定産業医 インフェクションコントロールドクター 東京都身体障害者福祉法第15条指定医 (呼吸器機能障害)(肢体不自由) |
非常勤
シニアレジデント