特発性正常圧水頭症

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高齢になってから発症する原因が特定できない水頭症(すいとうしょう)
ポイント
  • もの忘れ、歩きにくさ、尿もれを起こします。
  • 脳に髄液(ずいえき)が余分にたまり、脳の機能が低下します。
  • シャント手術によって治療します。
  • 手術後も外来診察を続けます。合併する認知症の治療も必要です。
① もの忘れ、歩きにくさ、尿もれを起こします。
  • もの忘れはアルツハイマー病などさまざまな原因によって起きます。水頭症では自発性や集中力の低下が目立ち、ぼんやりして元気がなくなります。アルツハイマー病などと比べて、まわりの状況がわからなくなり興奮して暴れてしまったり、徘徊してしまうことは少ないです。ただし一人の患者さんに水頭症とアルツハイマー病が両方存在することも多いです。
  • 歩きかたは左右の足を横にひらいて、すり足で小またになるのが特徴的です。方向をかえるときにふらつきが目立ちます。
  • 尿をがまんできなくなり、もらすようになります。
  • 3つの症状が揃わず、たとえば歩きにくさだけで気づかれることも多いです。
② 脳に髄液が余分にたまり、脳の機能が低下します。
  • 水頭症の患者さんは、髄液が入る脳室(のうしつ)が大きくなっています。
  • 髄液は脳と脊髄の周囲にある水分で、クッション材のような役割をはたしています。脳の細い動脈から水分が移動してつくられ、不要な物質を静脈やリンパ管に洗い流しています。洗い流すところが年齢とともに目づまりを起こすと、髄液がたまって脳の機能が低下します。
  • 腰椎(ようつい)のすきまから針を刺して髄液を抜き、症状が改善するかどうか確認します。これをタップテストといいます。
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  • 症状は無くてもCTやMRI検査で水頭症が疑われ、経過観察をしていた患者さんのうち5割は、その後に症状が出てきたという報告があります。
③ シャント手術によって治療します。
  • 水頭症を薬で治すことは、まだできません。
  • 髄液を抜く管を体に埋めこむ手術によって、脳の機能を回復させます。この管をシャントといいます。手術は全身麻酔で行います。
  • 歩きにくくなってCTやMRI 検査で水頭症が疑われ、シャント手術を行った患者さんの80%が、症状が改善したと報告されています。
  • シャント手術は管を埋めこむ場所が3種類あります。

1.脳室―腹腔(ふくくう)シャント(VP シャント)

前頭部か後頭部の頭蓋骨に1個の孔を開けます。ここから髄液が溜まった脳室にむかって2㎜ほどの太さの管を挿入します。管のもう一端は皮膚の下を頚部、前胸部を経て腹部まで通し、腸と腸のあいだに入れます。

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2.腰椎―腹腔シャント(LPシャント)

背中から腰椎のすきまを通して髄液のある空間に、1㎜ほどの太さの管を挿入します。管のもう一端は皮膚の下を腰部から腹部まで通し、腸のあいだに入れます。

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3.脳室―心房(しんぼう)シャント(VAシャント)

前頭部か後頭部の頭蓋骨に1個の孔を開けます。ここから髄液が溜まった脳室にむかって2㎜ほどの太さの管を挿入します。管のもう一端は頚部(けいぶ)の静脈から心房にむかって入れます。

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  • 3種類の方法は効果に差はありません。患者さんそれぞれの状態によって選択します。たとえば頭部の手術や感染をくりかえした患者さんでは、脳室―腹腔シャントは閉塞や感染しやすくなります。年齢とともに腰椎の変形が強くなっていると、腰椎―腹腔シャントは閉塞してしまうことが多くなります。心疾患があると脳室―心房シャントは勧められません。
  • 手術前日に入院し、食事は止めて入浴や点滴などの準備を行います。手術は1〜2時間程度で終了します。手術翌日から食事や歩行を開始し、1〜2週間で退院します。
  • シャント術で重い合併症がおきる可能性は3%と報告されています。硬膜下血腫(頭蓋骨と脳のあいだに出血します)、腸管穿孔(腸に孔があきます)、シャント閉塞(シャントが詰まります)、シャント感染などが挙げられます。

手術終了時の洗髪で血液汚れを流しとります。

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シャント術の入院日程表

  手術と周術期管理 食事 検査 点滴・注射
1日目 入院日 入浴して全身を清潔にします。脳室腹腔シャント術を受ける場合は、頭髪を剃ります。 食事は中止しますが、飲水は可能です。   水分補給のために、点滴を開始します。
2日目 手術日 手術を行います。麻酔の時間も入れて3時間程度で終了します。 食事も飲水も中止です。   点滴を続けます。
3日目   食事と飲水を再開します。 頭部CT 検査を行い、脳出血などの異常がないか確認します。 食事量が十分であれば、点滴を終了します。
4~7日目 歩行練習を中心としたリハビリテーションを行います。      
8日目 症状の変化と検査結果を検討して、シャントの流量を調整します。創部の抜糸を行います。   頭部CT 検査を行い、髄液が抜けすぎていないか確認します。  
9日目以降 状態が安定していれば退院します。さらに入院を延長してシャント流量の調整を続ける場合もあります。      

④ 手術後も外来で診察を続けます。合併する認知症の治療も必要です。

  • 退院後は半年から1年程度は、数ヶ月おきに外来診察をつづけます。シャントによって髄液を流す量を調節するためです。髄液ができる量もたまる量も、患者さんによって違います。多く流しすぎると脳の表面に出血がたまってきてしまうことがあります。シャントが閉塞してしまうこともあります。手術後に太りすぎると、シャントの流れが悪くなってしまうことがあります。
  • シャントの調整には磁力をつかいます。そのため以前は、MRI検査、磁気枕、磁気ネックレスなど磁力を発する検査機器や生活用品によってシャントの設定が変更されてしまうことがありました。しかし2019年から当院で採用しているシャントはこのような課題が解決されています。通常の検査や日常生活の磁力に影響を受けることはありませんので、術後に制限する必要はありません。
  • 水頭症の患者さんの20〜50%は、アルツハイマー病など他の認知症にもかかっています。水頭症の治療がうまくいっても、アルツハイマー病が進行して生活に支障がでてしまうことも少なくありません。
  • 当院では認知症の専門家である脳神経内科医による診察・治療も行います。認知症が進行すると社会的サポートが必要になります。その場合は医療ソーシャルワーカーと連携してご相談にのります。
  • 水頭症の治療がうまくいっても、閉じこもりがちで歩かなくなると下肢の筋力が低下して転びやすくなってしまいます。筋力を維持するように心がけることも大切です。

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