抗VEGF抗体治療と眼科疾患

加齢黄斑変性とは

加齢黄斑変性という病気についてみなさんは御聞きになった事はありますか?

網膜との真ん中にあり、ものの細かい部分や色を見分けるのに重要な部分である黄斑に異常が生じる眼の病気で、失明につながる怖い病気です。原因としては加齢(老化)が主な原因です。

まだまだ白内障や緑内障ほどみなさんがよく知っている病気ではありませんが、最近増加している病気で、欧米では成人失明原因の第1位になっており、米国では約175万人の患者さんがいます(2004年の調査結果より)。有病率(全体の中でどれぐらい病気の人がいるか)は日本の研究では1988年に福岡市久山町で行われていて、男性1.2% 女性0.33% 平均0.87%でした。今後は更に増えて行くと考えられています。増加の原因は、人口の高齢化や生活様式(特に食生活)の欧米化と考えられています。

加齢黄斑変性には2つのタイプがあり一つは萎縮型とよばれるタイプで黄斑がゆっくり萎縮し進行が遅くゆっくり視力が低下します。欧米人に多く日本人に少ないタイプです。もう一つのタイプは滲出型と呼ばれるタイプで網膜の外側から異常な血管(新生血管)ができ、網膜に浮腫(むくみの事)や出血を起こし急激に視力が低下し、早期から症状がでます。失明する人の大半がこのタイプで日本人に多いといわれています。

加齢黄斑変性とは

加齢黄斑変性の診断

まず自分でできるチェック方法としてはアムスラーチャートがあります。これは碁盤の目のように線が引かれた正方形の用紙を見てゆがんで見えたり、暗く見える場所がないかをチェックする事ができます。

眼科でおこなう精密検査としては詳しい視力検査、精密眼底検査、蛍光眼底検査、3次元光干渉断層計などを用いて黄斑部に出血や漿液性網膜剥離、網膜色素上皮剥離、脈絡膜新生血管などがないかを調べます。

加齢黄斑変性の診断

抗VEGF治療

加齢黄斑変性の現在の主な治療としては抗VEGF療法があります。

VEGFというのは血管内皮増殖因子といって加齢黄斑変性の症状を悪化させる最大の要因となる物質です。そのVEGFを中和させる抗VEGF薬を硝子体注入する治療です。治療は数分で終わるため高齢者の方にとって、精神的身体的負担が少なく、比較的安全性が高い治療と言えます。最低3回は注射をうつ事を必要としますが、視力改善効果が認められた唯一の加齢黄斑変性の治療法です。この治療法の注意点としては保険が適用されるが、比較的治療費が高いことがあげられます。又初回は1ヶ月おきに3回投与が必要となります。

又昨年よりこの抗VEGF治療の適応が拡大され網膜静脈閉塞症や近視性脈絡膜新生血管症、今年の春より糖尿病性網膜症といった他の眼底出血を引き起こす病気にも用いられるようになり、効果が認められています。

もしおかしいなと思ったらすぐに眼科に受診する事が大切です。抗VEGF治療は基本的に進行予防なのでかなり進行してしまってからでは手遅れとなってしまうかもしれません。特に生活習慣病の方は日頃から目の症状に注意し、網膜疾患が疑われる場合には眼科専門医に早めに相談する事が大切です。